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少し窓を開けると夜の冷たい風の中に潮の匂いが入った空気が車の中に流れこんできた。狭い路地を通り、行き止まりの防波堤に突き当たる。野乃はその間に寝てしまっていたようで、目を閉じウツラウツラと首を動かしていた。車はゆっくりと防波堤沿いの道を走る。すると前方でハイビームを2回、こちらに向けてシグナルを放つ黒塗りの車があった。そのライトは難破船を誘う灯台の明かりのように見えた。こちらも一回パッシングする。向こうの車から日数と月数と同じような黒スーツを着た霧谷家の関係者と思わしき人物が車を降りてこちらに向かってきた。肩幅が大きく張り、熊が人間になったような体格のその持ち主を見て、美空は車を降り、「ご苦労様楯無」と声を掛けた。
楯無と呼ばれた人物は、すぐさま美空に現状を報告した。「日数が攫われました」美空の横顔がそれを聞いて、険しい顔に変わる。
「それで? トライアドとか言ってたけど誰?」
「チャイニーズマフィアです、先代の誠司様がマグロ漁船に積んで密輸しようとしたやつらの薬物を根こそぎ奪ったんです、その時ここら辺にあったやつらのアジトを潰したのですがその時の報復かと、今回は向こうも葬送士らしき男を連れてきたらしくそれに捕まったみたいです」それを聞いた美空の口角が少し上がった。
「日数が攫われて何分?」
「15分程です、やつらが使っていたマグロの冷凍倉庫がある区画に連れていかれたみたいです、こちらは月数含めた残り6人も向かわせています」事情を聴き終わった美空は、ドアをコンコンと叩き「DB、ということなので後ろに寝てる人魚姫様を送ってもらっていいかしら」と言った。また腕時計を見ていたDBは、手をひらひらさせて返事をし車を発進させた。そしてすぐ近くの道を右折して、残された二人の視線から消えていった。美空と楯無も車に乗り込み冷凍倉庫に向かった。
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