霧谷美空という葬送士の日常と考察 ep.1

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「日数が攫われる前に、ナタリーさんから連絡がありました。変な中国人らしき男が霧谷の事を嗅ぎまわっていたと、うちが使ってた迷彩屋が拉致される前に間一髪逃げることが出来て、壁屋メアリーにそれが伝わったそうです」そう、とだけ答え、美空は等間隔に並んで過ぎ去っていく街灯の光を見るともなく見ていた。楯無から聞いたナタリーの話は、自分が置かれている状況の確認作業のような情報だった。 「あとスマホの電源は入れておいてくれとのことです」バッグから取り出してみると確かに電源が入ってない。そもそも触ったのが1日前くらいだったことを思い出す。「お嬢のスマホは、電源入ってることのほうが珍しいことですからね」嫌味なのか本音なのかわからない言葉。 「今度、あの人がやった仕事全部リストアップして貰える? こんなことばっかり起きるなら」 「先代がやってた仕事の資料は、先代が事故死した時に全部破棄しました。持ってるだけで危ない物が多すぎる」 「事故死ね…日数大丈夫かしら」 「殺さず持ち帰ったのなら、何かしら使おうとしたんでしょうし、大丈夫なんじゃないでしょうか」 「今時人質とか馬鹿げてる、元とはいえこんな稼業していたのならGPS埋め込まれてる体だってわかりそうなものなのに、自分達の居場所教える装置連れまわしてるようなものじゃない」 「追ってきてほしいんじゃないですか」 「退屈な作業じゃなきゃいいけど」  お嬢充電しておきますかと言われたので、楯無にスマホを渡そうとしたその時、ボンネットの上に何かが落ちてきた。人、スピードが出ていたところに車の前部にズドンと相当な衝撃を与えられたので、後輪が浮き車が空中で半回転する。全ての景色がスローモーションになり車を見上げている無表情な男の顔と目があう、赤いラインが入った黒いチャイナ服姿の男が立っていた。  美空と楯無は、ドアから外に出る。美空は球体魔法陣から仮面を取り出し装着した。  車は回転しながらガードレールに当たった後も勢いは残り突き抜け防波堤に当たって止まった。
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