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「楯無は他の人と合流しなさい、あれは私が相手をする」楯無はこちらを見ていない美空の後ろ姿に相槌を打ちそのまま走っていった。
「だれ?」
「ガン・フー」
「そう」
潮の匂いに雨の匂いが混ざった生ぬるい空気が二人に吹き付ける。
「うちのボスが怒ってたよ、あんたを拉致するって息巻いてた」
「日本語上手ね」
「金に成る国の言葉は覚えやすい」無表情でガン・フーは言った。
次の瞬間、ガン・フーが指で何かを弾いたのが見えた。『方技木鬼歳歳』飛ばされた何かから植物の芽が芽生え、爆発的に成長をし、紫の木の根が急激に成長して鋭い槍のような大量の根の先が美空に襲い掛かった。美空は後方に飛んだ、アスファルトにもガンガンガンと紫の木の根が突き刺さっていく。美空の四方八方から根の先が矢のように発射される。美空は大鎌で先を切り取りその反動を利用して右に避けた。
「いい動きするね、日本の葬送士、下賤なやつの下で働らかせておくにはおしいな」ナタリーを馬鹿にされたことに、美空は怒りを覚える。
更にガンフーは根を次々に繰り出した。美空はそれを大鎌で捌きながら避け続けた。無表情だったガン・フーの顔が美空の華麗に避け、よける姿を見ながら無意識に笑顔に変わっていった。美しく踊る様に避ける美空の姿に加虐心が刺激されたのだった。続けてガン・フーは『符技六星爆彩』を放った。ガン・フーの両手から3本ずつ中国式の苦無が繰り出され先には符が張られていた。美空はそれをギリギリで躱す。符はどんな効果かわからないものを触るわけにはいけなかった。
それでも苦無と根が同時に襲いかかってはいるが、一向に美空が捕まる気配がなかった。そうこうしているうちに苦無とガン・フーを繋いでいる鎖が切られ地面やガード―レールに当たって、閃光と爆発が同時に炸裂したが、美空にはその影響がなかった。
いつまでも捕まらない美空に対して、ガン・フーは徐々に苛々してきた。それを隠そうともせず大声で『方技木鬼万像』とがなった。美空に向かっていった根が、急にガン・フーの方に向かい絡みつき飲み込み鬼の形に変化していく。3階建ての家くらいはありそうな、紫の鬼に変化した。
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