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霧谷美空という葬送士の日常と考察 ep.2
美空は日数を救出してきた楯無達と合流して帰還することになった。やはり日数は美空を釣る餌として用意されていたようで、話によるとロシアの過去最低気温よりも少しだけ温かい所だと言われて、マグロの冷凍庫にそのまま突っ込まれたらしい。すぐに救出された日数は命には別条はなかったが、ガン・フーの紫の木の根により右肩と左足に怪我を負わされていた。
日数の負った傷は鬼の気を纏ったものにつけられた霊傷ということもあり、野乃の助けを借りる他になかった。野乃は人魚を受け継ぐ巫女の家系であり『人魚歌舞』と呼ばれる巫女術で霊傷を癒すことが出来た。そういうことだったので、美空は野乃に電話をして寝ているところを起こし、寝起きで不機嫌になっている野乃を今度おいしいケーキをホールで持っていくからとご機嫌を取り日数を野乃が住んでいるマンションの部屋に運ばせた。
美空は雨が降る前に家に帰りたかったので家に帰り、風呂場に直行し、風呂場から出た後、桃の香りがするボディークリームを入念に塗ってからベッドの中に入った。
朝起きると雨が降っていた。雨の日は、雨戸に当たる雨の音が、美空の記憶のドアをコツコツコツとノックしているように響いた。夢現の中、寝返りをうち美空はナタリーと野乃に初めて会った時のことを思い出す。あの日も今日のように弱めの音を出す雨が降っていた。
その日は、美空があの人という自分の父と弟を殺した日。
美空の生まれた霧谷家は、陰陽寮を追い出され没落した陰陽師の家系であった。追い出された理由は奉ってあった神刀を盗んだことに関わったためである。神刀が盗まれた時、下手人は捕まって裁かれたが、霧谷家が関わっているであろうというところまではわかったが盗まれた神刀は見つからなかった。決定的な証拠はなかったが、霧谷家はこの嫌疑により陰陽寮から追放されたのであった。その後霧谷家は表舞台からは姿を消したが、外法や禁忌に手を出し、どんな人間の姿にもなれる傀儡を作り出し、裏の世界で暗躍していった。しかしそれは幾人もの女の生贄を捧げた結果であった。
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