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女の子達は、美空に赤いカラスの模様が付いた般若の面を手渡して、貴方のために捕まえてきたと言った。私達は私達を見ることが出来る貴方のような人をずっと待っていたと言い、次の瞬間、女の子達は般若の面に次々に吸い込まれていった。女の子達は般若の面と混ざり合い溶け合い、深く黒い球体に変化した。その球体の表面に、女の子の名前が浮かび上がる。野菊、柊、千秋、矢留…美空が小さな頃から会話してきた女の子達の名前。その名前が解体され、弾け、新たな文字列が形成されていった。呪言の祝詞が一つ一つが球体型魔法陣の一部となり並列に刻まれていく。それらが規則正しく整列し、文字の動きが止まった瞬間に、触って、と重なりあった女の子達の声が美空を誘った。
美空がその球体に手を伸ばし、触れると手が中にスルリと入り、仮面を手渡してくれた。先ほどの般若の面が、赤いカラスの模様は健在であったが、目の部分だけの丸みを帯びたデザインの仮面になっていた。
いつまでも貴方と共にと言って、立体型魔法陣は消えていった。美空はその仮面を付けると、体中に電撃が走ったような感覚に襲われて、仮面をすぐさま外した。しかし美空は仮面を付けたことで全てを理解した。
女の子達が残した全てがこの小さな仮面に凝縮されていたのだ。女の子達はたまたま通りがかった悪魔に、道案内され協力してもらいカラスを捕まえたらしかった。だから美空の前から女の子達は消えていたのだ、悪魔の協力の代償が将来私を守り続けることだったらしい、女の子達はその代償を喜んで受け入れた。
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