0人が本棚に入れています
本棚に追加
それを全身で感じた美空であったが、未だに迷っていた。いくらこの能力を貰ったからといって今ここから逃げ出したとしても、『地獄摺狸』から逃げ続けるのは現実的な話ではなかった。禍々しい気配は感じることが出来るが、あくまでそれは蔵の中に無造作に押し込められている時の話であり、気配を消され近寄られたら美空の力では感知出来ないかもしれないし、全ての近寄る人間に対して常に警戒心を解くわけにはいかない生活を続けていくのは不可能に近かった。
ここで『地獄摺狸』を壊すか、弟の手にかかって死ぬかその二つであった。
母は目を覚まし「ごめんなさい」と私に一言言って、美空に後ろを向くように言い、帯の微調整をした。母は仮面の事は見えていないようであった。
最初のコメントを投稿しよう!