猿鬼と葬送士

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 夕暮れ時、どこにでもある街のどこにでもある風景。  電柱、家々、マクドナルドの看板、バスの停留所、郵便ポスト、公園のジャングルジム、奥には駅も見える。そんな風景が見渡せる陸橋の上に三人の姿があった。ただ、この辺りにはその三人以外の息遣いであったり、雑音、夕食を作っている匂い等がない。いつものこの時間の陸橋は、帰宅ラッシュ時ということもあり車や坂を懸命に上り下っていく学生が乗る自転車等が行きかっていたがその姿や形はこの時は見当たらなかった。  ここはサカサマセカイ、普通の人がいるところから少しばかりずれた世界。通常の世界と異世界との間に出来ている緩衝材としての世界。異世界から現実世界に干渉を及ぼすにはルールがある。そのルールを破りサカサマセカイを伝って、現実の世界に潜りこもうとするものを排除する者達『葬送士』それを生業とするのがここにいる三人であった。 「ねえちょっとまだなの?」とピンクのヘッドフォンを付けて、砲台に分類されそうなくらい大きなスナイパーライフルを構えていた鰯ケ島野乃が言った。 「もう少しです」野乃と背中合わせに立っている男、スキンヘッドに黒いサングラス、黒いチョッキ、白いワイシャツにタータンチェックのネクタイとファッション雑誌から抜け出たような出で立ちのDBが言った。  そんな二人の様を見るともなく見ていたもう一人の少女、霧谷美空は、球体型魔法陣から白地に目元には赤いカラスのマークが描かれている仮面を取り出し装着した。それと同時に現出した大鎌を携え、二人から一歩、ニ歩、三歩と華麗なステップで少し距離を取りストレッチでもするかのように大鎌を振り回した。一頻りひとしきり大鎌を振り回すとフッと一呼吸入れて新体操選手のようにポーズを一回決め大鎌を空中に放り投げ側転を始めた.
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