猿鬼と葬送士

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「もうちょっと早く言いなさいよ!」野乃はDBに叫んだ。 「僕と美空は簡単に避けれました。野乃さんどうせ傷ついてもすぐに治るしいいじゃないですか」サングラスを掛けなおしながら言った。 「あ、た、し、はあんた達と違ってインドア派なのよ! わかる? 何回も言ってるけど治るからって痛くないわけじゃのよ!」DBはその様子を鼻で笑って、野乃が吼えているのをよそ目に体の半分以上をサブマシンガンで吹っ飛ばされた三体を青の花嫁の思念硬糸で締め直し、三体分の魔力を流動魔石にして回収する作業に取り掛かった。他の二体の花嫁達はDBを護衛するかのように佇んでいた。 「そんなことより美空さんの手伝いに行ったらどうです?」作業している背中から声が聞こえた。  野乃はうんざりするような顔で、美空と戦っているものを見た。ギィイインと激しい金属が擦れる音。美空の大鎌が長い爪を擦り上げたから出た音だったようだ、標的の顔は隈取された赤ら顔、頭には小さな二本の角。 「分類は鬼型、猿鬼ですよ猿鬼」DBが適当に言葉を投げてくる。  猿鬼は、こちらにも注意を少し注いでいるように思えるが、美空相手に相当苦戦を強いられているようだった。両手の爪を使い、曲芸のように動く猿鬼の攻撃は、美空の軽やかなステップで捌かれていた。爪を跳ね上げ今度は美空が前に出た。たまらず後方に猿鬼は飛んだ。あー終わったと野乃は思った。  猿鬼が後ろに飛んだその時、美空は顔に笑みを浮かべ、その場から消えた。猿鬼の首が飛び、美空は猿鬼を直線上に通り越していた。単純に猿鬼の後ろに飛んだスピードよりも美空が前進する方が圧倒的に速かった。ご苦労様と言ってDBが首が取れた猿鬼の体から流動魔石を抽出する作業に取り掛かった。  DBのグライアイの目は今もぐるぐると辺りを観察しているように回っているが、辺りに響いていたピアノの演奏の音が小さくなるにつれ同調して、目も小さくなっていった。落ちてきた目を後ろ手にとって左目に入れなおした。 「戻りましょうか」DBは言った。 「帰ったらパフェ食べたい、色々乗ってるすっごいやつ、なんか近くのファミレスでなんたらフェアってやってるのよ」  DBがガム食べますと言って差し出した緑の粒を、野乃は鳥がついばむように口の中に入れてピンクのヘッドフォンを付け直した。 美空は、静かなサカサマセカイの雰囲気を楽しんだ。
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