蝶と夕方

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 つまり、私の見分け方で行くと、この虫は蝶ということになる。しかし私には、どうにも確信が持てなかった。  唯一の手掛かりを失った私は、、もうこの虫を蛾か蝶か見分けることができなくなっていた。学者のような人なら一目でわかる特徴が他にもあるのかもしれない。しかしもう私にはまったく分からなくなってしまった。それにもかかわらず、私は蝶を観察することを止められなかった。  黒地に白の斑が入った翅を、小さく丸まった口を、ふっくらとした胴体が震えるのを、翅のつけ根の間の獣のようなオレンジの毛を、私は惹きつけられるように眺めていた。 時を忘れ私はその翅のある虫を眺めていた。  意味のない捕獲、意味のない観察だった。それでも私はなぜか満足した。一見すると無駄ともいえるこの行為に、真理を見つけたようにひどく興奮していた。この生物が蛾でも蝶でもどうでもよくなった。この生物がなんであろうと、私の生には何の関係も生まれない。 一時は恐れ、惹かれ、憎んだそれをあっさりと私は手放した。蝶はとらわれる前より大きく揺れながら去っていった。指に残った鱗粉が少し嫌だった。
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