神様の見る映画

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「映画、終わったね」 夫が私にいう。 「そうね、面白かった?」 「まあね、登場人物を追っていくので必死だったけれど」 彼が笑う。 「しかし、本当に映画が好きなんだな、君は」 「そういうあなたも、映画好きでしょ?」 「もちろん。そうじゃないと僕ら結婚していないだろう。君はよく僕を映画好きって分かったね。どうしてだい」 「内緒よ」 夫には、嘘をついている。 私が映画好きな理由は、映画館の近くに住んでいたからだけではない。 映画館の神様に出会ったからだ。 それに、彼が映画好きだと知った理由も、内緒にしている。 スクリーンの中、未来の私の隣で楽しそうに映画を見ていたのが、彼だということは、内緒にしている。
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