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「ここができた頃から、ずっとここの神様をやっておるのです」
「からかっているんです?」
いくら私が童顔だったからと言えど。
「からかってなどいませんよ、お嬢さん」
「自分が神様だなんていう人、初めてですよ。誰か知りませんけど」
「信じてもらえないもの確かだね。私がここで人と会ったのも初めてですから」
「それより、なんでこんな遅い時間に映画を?」
なぜか次第に、神と名乗る老人と打ち解けてきた。
「映画を夜に見るのが好きなのですよ。誰もいなくなったスクリーンで静かに見る。今日はお客さんもいますがね……」
「すみませんね、お邪魔しちゃって」
少し呆れたように言い放つ。
「いえ、構いません。ただお喋りが過ぎるのも良くない。ささ、質問はここまでにしてゆっくり静かに見ましょう」
老人はスクリーンに向き直った。私が声をかけても、首を振るだけだった。スクリーンは、場面が変わって、砂漠の上で天日干しされるたくさんの書物が映し出されていた。映画の内容、あまり覚えてはいないが、ある詩人の半生を綴ったものだった。
エンディングとなった。スタッフロールが流れている。
「終わりましたけど、映画」
「いやいや。映画はね、最後、スクリーンが真っ暗闇になってからでないと終わったとならないのですよ」
「私は眠いのでこれで……」
「お嬢さん」
私が立ち上がろうとすると、老人が、優しい目をして私に向き直った。
「映画を、途中で退席するのは悲しいことですよ。おやめなさい」
「……」
変な人に捕まってしまったものだ。私はしぶしぶ、そのまま座っていた。
スタッフロールが終わると、スクリーンは真っ暗闇に照らされた。
あたりは何も見えない。
「もう終わりましたよ」
返事がない。
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