神様の見る映画

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映画が終わった。手書きのスタッフロールが流れる。 「じゃあ、そろそろ私の質問に答えてくれてもいいんじゃないです?」 「質問というのは?」 「おじいさんは、本当は誰で、どこの人なのかを」 「質問の意味が分かりかねますな」 「だって、どう見たって外国人なのに、日本語はぺらぺらだし、自分を神様だというし、深夜の映画館で一人こっそり映画見ているし、一体何なのかなって」 「私には嘘の吐きようがありませんよ。ここの神様で、ここに住んでいるのです」 「神様って言われても、普通自分から言いますか?」 「普通の人なら言わないでしょうな」 「ま、そうですけど」 予想しなかった回答に少し笑ってしまった。 「では、私が今度は質問しても良いかね?」 「ええ、どうぞ、カミサマ」 「映画は楽しかったかね?」 老人がそういうと、スクリーンが真っ暗になった。スタッフロールが終わったのだ。 非常灯の薄明かりに照らされると、やはり老人はどこにもいない。
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