不老不死

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“酔っぱらって公園のベンチで自ら凍死するなんてことは、人間にしかできない死に方”だからだ。 それは荻野目が、ここ何日かのボンヤリした頭で調べてたどり着いた、最も楽な自殺の方法だった。 荻野目の暮らす日本には、現状、安楽死というものはない。 よって自殺志願者が選択できるのは、身投げ、首吊り、飛び降り、薬物、練炭etc。わざわざ包丁を腹に突き立てて死のうと思う人は、荻野目を含めて、ほとんどいない。 例に挙げたものはどれも遺体は目も当てられないものになるし(首吊りや入水は有名なところだ)、電車に至っては遺族に賠償が求められる。荻野目の良心には何の呵責もないが、あまりに影響が大きかったり、死んだ後まで何かに取り沙汰されるのは、荻野目の望む結末とは違う。一時期に、集団自殺や自殺控除という名目での殺人事件なども報道されたが、荻野目はやはり独りで死にたかった。 なにより、実は、どれも成功率が割合低く、生き残ってしまった場合の後遺症も“エグい”。病院のベッドに寝かされてしまえば、今度はそれこそ、死ぬまで自分で死ねないのだ。喋ることも考えることも動くこともままならず、今まで荻野目をゴミのように扱ってきた人間が、善性を振りまいて、荻野目を自己肯定のための感情の道具にするのだ。そんなのは耐えられない。     
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