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「仕事で来てんの?どこから?」
「神奈川です」
「神奈川。横浜の?」
「はい、横浜の」
「へー!ここまで遠かったろ~。あそこの駅も寒いしさぁ、っとロクな町じゃねえよ」
「ロクでもねえ町で育ったのがオメエだよ!」
「へへへ、俺たち、腐れ縁でさ、もう三十年よ」
地元の幼馴染だというサラリーマンの男性三人と、乾杯をした。
甘く米臭い日本酒は、食道を刺すように通過していった。失敗だ、これは悪酔いしそうだった。荻野目は酒そのものの味はどうでもいい。ただ酔って、感覚が鈍磨していくのを楽しむ手段のひとつとして捉えている。なので、ビールでもウイスキーでも日本酒でもテキーラでも、一度スイッチが入れば水のように飲めた。
「名前は?」
「裕生」
「裕生。いいねえ~」
「ふふっ。なにがいいんですか」
「いや、その見た目で裕生なのがいいよね」
「あっはは。おじさんだって貫禄あるじゃないですか」
「あれっ。もう飲んじゃったの?次も熱燗?」
「あ、じゃあ、麦のソーダ割りで…」
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