不老不死

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それから店が閉まるまで、荻野目は飲み続けた。先客の男性たちが荻野目よりも早く店を出るときに、楽しい会話のお礼にと会計をまるまる肩代わりしてくれて、ついでにその後に飲む分も自分たちにツケてくれるよう、店主に取り計らってくれた。 深夜に放り出された見知らぬ町は、ひどく静かだった。 真横でインド象が歩いているかのような三半規管のいかれっぷりで、何度か道端に嘔吐を繰り返しながら、荻野目はそれでもブルースなんかを唄って、公園を探してふらふら徘徊した。今ここで眠っていいよと言われたら即座に仰向けに倒れられるくらい、爪先までパンパンにアルコールが回っていた。唾液を飲んでも飲んでも、糞のような甘さが喉に張り付いていた。荻野目はいつも飲酒をすると手足や口元が痺れ、脈も乱れ、まさに虫の息になるのだが、それすら可笑しかった。 おかしくておかしくて―頬が引き攣るくらいに笑って、見つけた覚えのない公園のベンチにどっかりと横たわった。 服はタバコ臭いし、お気に入りのブーツも自分の胃液で汚れていた。いつの間にか持たされていたビニール袋とティッシュをクズ籠目がけて投擲する。 「あっはっは。入らねえ」 発した声も、しわがれたウシガエルの鳴き声のように潰れていて、この世界でいま自分が一番酔っぱらっていると叫んでやりたくなった。 「よいしょ、っと…」     
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