お客様は神様です

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お客様は神様です

 昼過ぎのとあるファストフード店。ピークの時間を終え、いつもならば一息つくところであったのだが、生憎と今はそれどころではなく店内は騒がしかった。と言っても客が押し寄せてごった返しているだとかそういう訳ではない。むしろ店内にいる客は女子大生らしき二人組にやたら細身の老人、そしてカウンターにいる女性客だけと、店としてはやや寂しいほどであった。しかし問題はそのカウンターにいる客である。 「だから、さっきから言ってるでしょ!」  声を荒げているこの女、横に広い体と毒々しいまでの厚化粧のこの女は、名前を屈比(くつひ)という。  屈比のあまりの剣幕に若い女性スタッフはすっかり顔を伏せて目に涙まで浮かべてしまっている。 「こっちはお金払ってる客なのよ!お客様は神様なんだから、つべこべ言わず素直に言う事聞いてりゃいいのよ!」 「そう言われましても、レシートも無いとなりますとこちらとしても確認が取れませんので、」 「何よあんた、あたしが嘘ついてるって言うの!?」 「いえ、そういう訳では、」  スタッフがいよいよ困り果てたというところで、丁度所用で外出していた店長が帰って来た。ただならぬ雰囲気を察するや否や即座に対応に出る。
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