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雇い主、というか仕事の対象である男性の視界に入らないところで薄着のあられもないかっこでせっせと屈み、胸や腰を盛大に揺らして片付けに励む中途半端な若い女。これってわたしである必然性全然なくない?どうせ誰にも見られてないよ。と膨れっ面で手を止めずに考えるけど。
リビングのソファーで黙って静かに控えてパソコンで自分の仕事してるお目付役の青山くんもそのことについては平然として文句も言わない。もうこれはそういう意義の仕事、依頼主の早月さんの意向込みなので。
あの日、部屋の主の弟さんが我々に対してうるさいと一言残して早々に別室に退散してしまったあと。姉である彼女の方はまるでそういう反応は想定内、みたいに落ち着き払ってまあまあ、とわたしたちを宥めて座らせた。
「あまり気にしないで、ああいう子なの。…それで、見ての通りの状態の部屋でしょ。これを、そうね、一遍じゃ当然片付けきれないのは当たり前だから。しばらくの間何回かに分けて通って、ゆっくり時間かけて綺麗にしてもらえないかな?とにかくあいつ、昔から片付けるの全く下手で。一人暮らしになったら大変なことになるなぁと漠然と予測はしてたんだけどね」
「え、でも。弟さんはこの場にいないですよね?少なくとも今は」
わたしは顔を上げ、思わず彼女に向かって疑念を表明した。
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