第3章 エニシダ家の少し特殊な事情

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やっぱりこの人、今ひとつわたしの仕事の内容がわかってないんじゃないかな。セクシーが主で家事は従。料金知ってればただの家政婦じゃないって普通察すると思うけど。いくら請求されるか知ってんのかな? 常にはないことだけど。青山くん、ちゃんと早月さんに内容説明して、見積もりも出してあげたのかな…。 「あの、一応。こんな程度の物件でお金取るのかと思われると恐縮なんですけど。えーと、動いてるところを鑑賞して頂くの込みの価格なので…。あの、ガチの片付け作業なら。もっと、合理的なお値段と手際のいい業者さんがあるんじゃないかと。お掃除サービスとか。便利屋さんとか。数人で来て一気に片付けてくれますよ、多分」 遠慮しつつも正直にそう申し出る。二時間で一人作業じゃ絶対、全然終わらないの目に見えてる。何回も通ってって簡単に言うけど結構な額になっちゃうし。どう考えてもちゃんとプロに任せた方が…。 早月さんは全く動じなかった。 「大丈夫、それはわかってる。あなたが提供してるのがどういうサービスかはちゃんと承知してるわ。この青山さんから説明も受けてます。わたしの需要に対して必要かつ充分よ。でも、こちらからも事情をお話ししないと。どういうことかと思うよね、そりゃ」 彼女は横を向いてわたしたちから煙を遠ざけるようにそっと吐いた。それから脚を高く組んでおもむろに切り出す。     
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