56 恋するシーシュポス

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「うわぁ、素敵すぎだろ」  なんですか、この神絵。さすが神様。絵はマジで素晴らしいよ。絵はね。あのグイグイ迫り来るバリタチ感がなければ。 「……何が?」 「うわああああああ!」  びっくりした。俺の大きな声が誰もいない休憩室に響き渡ってしまう。叫び声を上げた口からぽろりと心臓が飛び出ちゃうかと思った。 「もおおお! なんだよ! びっくりさせんな!」 「お前がうっとり顔で素敵なんて呟きながらスマホ眺めてるから、俺の写真かと思ったのに」 「!」  見てたのは、ヒナさんの昨日SNSに上がってたラフ絵だ。テレビ見て滾って描いちゃったんだって。落書きですけどーって言ってるけど、俺にしてみたら、神絵なんですけどーだよ。本当に。  そしてそんな俺を見て「あ~ぁ」なんて、意地悪な溜め息をわざとついたのは、穂高だ。 「待ったか?」 「ううん。へーき」 「ヒナさんに見惚れてたもんな」 「ちがっ! 絵だろ! 絵っ!」  俺の、彼氏。 「はいはい」 「んなっ」  もう付き合って、半年以上たつ。
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