56 恋するシーシュポス

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 教えてくれるわけもない。そして、すたすたとモデル並の足で闊歩する穂高に小走りでついていく。 「あ、そうだ。ゲームのほう、テスト課どうだった?」 「あ、うん。もらってきた、経過報告書」  ふたりで話してるんだ。いつか、この仕事が落ち着いて、もう少し自分たちレベルアップを図れたら。 「サンキュー」  図れたら、ふたりでゲーム製作会社立ち上げたいなって。社名はもう決めてあるんだ。 『シーシュポス』  頑張り屋のシーシュポス。いつか、ね。まだ、俺らには無理だけれど、いつか、ふたりで。 「なぁ、祐真」 「んー?」 「……だよ」 「!」  頬を掠める吐息と言葉。 「っぷ、すげぇ真っ赤」 「んなっ!」  もう付き合って半年以上。これは、俺にとって大記録なんだ。交際期間最長記録。そして、これはずっと更新し続けるだろう記録。  恋はいつか、終わる。  そんな恋の定義に抗う、俺と穂高の新しい恋が作る大記録、そう、確信している。
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