【 華の國 】

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 日を追うごとに信者の数は増えていくようだった。お勤めの時間が始まると、ひっきりなしにユウイを拝みに来る。はじめの頃はさっぱり聞き取れなかったのが、今ではどの願いも、祈りも、鮮明に聞こえるようになった。誰も彼も些細のことから生死のことまでユウイに頼みにきて、いつかこの声を耳にしたような気のすると云う声も、幾つかあった。 「貴方様の為に、巨大な鳥居を建てましょう。その表面に、おしみなく金箔を施すのです」  心なしかうきうきとした様子で、男が云う。 「どうして、」 「皆が望むからです」 「そう」  人間であった頃はたくさんのものを欲しがったような気がするが、今では祭壇や寝所に飾られる夥しい花の香りを嗅いでいるだけで、自然と心は満ちていく。粥にも緑色の汁にも水風呂にも慣れて、もうかつてのような我侭(わがまま)も、云わなくなった。  そろそろ自分は神らしくなったのかしらと、ユウイは思った。
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