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「そのようなことでは困ります。さあ、存分にお怒りなさいませ。私を祟りなさいませ」
怒っているのは男の方だった。ユウイはますます窮して、どうしたものかと迷った挙句、
「お前の口の中に、でっかい口内炎が出来れば良い」
などと云ってみると、男は満足そうに、
「そう、そう、その調子です。このたびの神様は上出来です」
左の口の端を指で引っ張って、頬の内側を見せるようにすると、そこにはユウイの云ったとおりに、大きな口内炎が出来ていた。なるほど神とはこのように人に罰を与えるのかと、ユウイは密かに学習をした。
化粧が終わると、続いて男は一枚ずつ花びらを包むように、ユウイに着せていった。幾重にもかさねて、肩が凝る。いずれの衣にも全面饒かに刺繍がしてあって、おまけに光る石やら金やらの装飾も、過剰につけさせられる。
「これ、全部つけなくちゃ駄目なの、」
「もちろんです。おおいに着飾れば着飾るほど、たくさんの人の尊敬を集めますから」
「そう」
息苦しさに溜息をつきながら、ユウイは頷いた。
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