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「そのようなことではいけません。どの人もみな、一心に貴方様に向かって祈るのですから」
「そう」
ユウイは再び込み上げる欠伸を噛み殺して返事をする。「それはせつないね」
「そう、せつないのです。昨今ぞくぞくと新規の神々が台頭していますが、人々は真に頼れる、勁い神を求めているのです」
その気持ちは、ユウイにも理解出来るような気がした。生きると云うことは、まこと、まこと、心繊い。
「それで、その勁い神になる為に、僕はどうすれば良いの、」
ふかふかの座布団の上で坐り直しながら、ユウイは訊ねた。
「素晴らしい心がけです。まこと、このたびの神様は上出来です」
男は微笑んだようだった。
「ご安心下さい。貴方様はいちいち私の申し上げるとおりにすれば良いのです。全てこの私が、善きように導きます故。そうすれば、誰もが崇め奉る立派な神となれますでしょう」
「つまり、人気商売ってこと、」
「そのような俗なことではありません。貴方様を信じ、崇める者がいればいるほど、貴方様の神力は高まり、その分だけ多くの者を救えると云うことですよ」
さ、悩める者たちの祈りにお耳を傾けるのですよ。まず肝心な、貴方様のお勤めです。
男の教えに、ユウイは素直に従った。
「そう、判った」
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