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慥かに退屈ではあるけれど、勉強や運動をするよりかは、怠け者のユウイには良かった。それに、神だ神だと讃えてくれるのならば、お勤めの後にはさぞや贅沢なご馳走が出てくるに違いない。
けれどもようよう本日のお勤めを終わらせて、くたびれ果てたユウイの前に出された膳の中身は、真っ白の粥と、椀にたっぷりと注がれた緑色の液体だけであった。
期待を裏切られ、「これだけ、」と、情けない声で訊ねてしまう。「肉が食べたい」
男はきっぱりと頸を横に振った。
「なりません。穢れを口にされることは、断じてなりません」
「そう」
ユウイは仕方が無いと、粥を匙で掬って口に運んだ。ほのかに塩味のするだけで、さして美味しいとも思えないが、腹が減っていたのでたいらげた。椀の中のどろどろとした緑色は、どうやらさまざまの野菜の汁のようだった。野菜は苦手である。
「これはいらない」
「いけません。米も、作物も、貴方様に捧げられたもの。貴方様の血肉となり、力の源となるもの。さ、残すことなく召し上がりなさいませ」
「そう」
ユウイは渋々と椀を傾けた。食事は散々だった。コンビニエンスストアで売られているフランクフルトが恋しくなった。
「コンビニ行ってきても良い、」
「いけません。彼処は穢れが多すぎます」
「そう。じゃあ、ゲームしても良い、」
「いけません。お躰に障ります」
男は全然聞き入れてはくれない。どうも神と云うのは不便な身のようだぞと、ユウイは水風呂に顫えながら思った。
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