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明くる日は男と共に街へ出た。男がユウイを抱き上げたまま歩いた。その後ろを、坊主たちが鈴を鳴らしながらついてきた。
「自分で歩けるけれど、」
「私は貴方様の車ですから」
そう、と、ユウイは答え、人にあふれた通りを見回した。ずいぶんと久し振りに見た景色のように映った。人々はユウイに何の興味も示すことなく横切っていったり、値踏みをするような目つきをしたり、手を擦り合わせて拝んだりと、いろいろな反応をした。
ハンバーガー屋の看板を見つけて、ユウイは懐かしくなって男に云った。
「ハンバーガー食べたい」
「いけません」
男はすぐさま却下する。店の入り口から出てきた人たちが目を繊めて齧りつくハンバーガーを、ユウイは指をくわえて見つめた。
拍子木の音がして、向こうから別の神様がやって来た。その神もユウイと同じように大男に抱き上げられて、後ろを一人の小男が拍子木を打ち鳴らしてついてきていた。
神仲間に出会えたのが嬉しくて、「こんには」と、ユウイは話しかけた。歳も近いようだし、友人になれれば心勁い。けれどもその別の神様は薄く唇を開けただけで何も発さず、ユウイの横をひっそりと通り過ぎていった。
後ろ姿を見送りながら、ユウイは彼の衣装が酷く色褪せているのに気が附いた。ユウイと比べて、装飾品も少なかった。
男がひややかに云った。
「たいしたご利益がなければ、人の心は簡単に離れていきます」
別の神様に向かって拝む者は、一人としていなかった。
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