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「雨、明日は止むといいなぁ。近所の神社のお祭りがさ、今年はちょうど明日なんだよ」
奏風はスプーンでカレーをつつきながら、ちょっと嬉しそうに目を細めた。
「そうか。じゃあ久しぶりにお前と、お祭りに行けるんだな」
「うん。屋台も出るからね。お好み焼きとかたこ焼きとか」
「食べ物ばっかりか。食いしん坊め」
くすっと笑う奏風に、湊音はぷぅっと頬をふくらませ
「違うよ。他にも金魚掬いとかヨーヨー釣りとか、射的とかさ」
「はいはい。湊音はいつまでもお子さまだ」
「うー。ムカつく。兄さんの方が……」
「花火もあがるのか?」
「うーん。天候次第かな。前は風が強くて中止になったでしょ」
「そうか……。見たいな、おまえと一緒に、花火」
「うん」
湊音は嬉しそうに頷いて、スプーン山盛りのカレーをぱくっと頬張った。
「おまえさ、この布団の並べ方は止めろって言ったろ?」
奥の和室の襖を開けるなり、奏風が呆れたようなため息をつく。湊音は立ち止まる奏風の肩を抱くようにして、部屋の中に入ると
「ふふ。新婚さんみたい、でしょ?」
「恥ずかしいよ?おまえ。掛け布団と枕カバーの色、ブルーとピンクって」
「いいじゃん。細かいこと、気にしない。ほら、兄さんはそっち」
奏風はやれやれと首を振りながら、促されるままに、ピンクの布団の上に腰をおろした。
いそいそと、湊音がその横に座る。
「おまえは、あっちだろ?」
ブルーの布団を指差す奏風に、湊音は後ろから抱き着いて、頬に唇を押し当て
「寝る時はあっちに行くよ。それより、ねぇ、兄さん……抱いても……いい?」
熱い吐息と共に、湊音が耳元で囁くと、奏風はびくっと身体を震わせた。
「いいよ。おまえに抱かれる為に、来たんだから」
答える奏風の声は、もう既に、甘く掠れていた。
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