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奏風の喘ぎに合わせて、自分を包み込むそこが複雑にうねる。拒むように押し返そうとしたり、引き擦り込もうとしたりする動きに翻弄されながら、じわじわと腰を沈めていった。
「あ……っああん……っ」
大きくせり出したカリが狭い隘路をくぐり抜けると、奏風はひときわ艶めいた声で鳴いて身体を弛緩させた。
痛いくらい締め付けていたそこが、しっとりと絡みついて自分を包み込む感触に、湊音もほぅ……っと安堵のため息をつく。
「だい、じょうぶ? 奏風」
息を弾ませながら、湊音が問いかけると、奏風は首だけ動かして振り返り、涙に濡れた目を恨めしげに細めた。
「……大丈夫、じゃない。おまえ、強引」
「ごめん。余裕、なかった」
いくら柔らかくほぐれているとはいえ、濡れることはない奏風のそこに、ソープのぬめりも借りずに押し入ってしまったのは、焦らしているつもりで自分の方が、完全に余裕を失っていた証拠だ。
湊音が情けなく眉をさげて、少し拗ねたように謝ると、奏風はふふっとふきだした。
「おまえ……その顔ずるい。……小さい頃と、同じ顔してるよ」
奏風が声を発すると、繋がっている部分から振動が伝わってくる。
産まれる時に離れ離れになってしまった分身と、今混じりあってひとつに戻れたのだと妙に実感出来て、湊音は再びほお……っと安堵の吐息を漏らした。
「奏風の中……あったかいな」
腰から手を離すと、その白い背中にぴったりと覆いかぶさった。
繋がっている場所だけじゃなく、皮膚の全てを重ね合わせて、本当にひとつになってしまえたらいいのに。
再会の喜びを味わった瞬間から、時は残酷に別れまでのカウントダウンを確実に刻んでいく。
どれほど深く身体を重ねても、奏風はまた、この腕の中からすり抜けていってしまうのだ。
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