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「んっは……ぁ……あぅぅ……んぅん……」
焦れた奏風の口から漏れるよがり声は、艶やかに妖しい音色を奏でていた。
広い浴室に響き渡るその鳴き声が、湊音の官能を揺さぶり続ける。
初めて兄を抱いた夜も、低く掠れたこの音色が、湊音の心と身体に、まるで蔦のように絡みついた。
あの日から湊音はずっと、決して逃れることの出来ない甘美な檻の中に囚われている。
自らの意思で。
「奏風。いい? 堪らない?」
「んっあ……みな、とぉ……も、だめ、だ。もう、許し……」
腰を激しく揺らしながら、終わりのない甘苦しい愛撫の先をねだる奏風に、湊音は意地悪く微笑んだ。
「もう、なに? どうして欲しいの? 言ってくれないとわからないよ」
「み、なと、ねぇおねが……っそこ、ぐりってしてよ」
「そこって……どこ?」
わざととぼけて首を傾げると、奏風はふうぅっと吐息を漏らし、奥を嬲り続ける湊音の手首を掴んだ。
「も、……っ終わらせて? 意地悪するな、って」
奏風の目から零れ落ちる雫が、見上げる湊音の頬をぽつぽつと熱く濡らす。
目元を薄紅色に染めて、うっすらと開いた唇を震わせる奏風の悩ましげな顔に、湊音の楔がずくんっと熱をあげる。
「ごめんね。泣かないでよ、奏風」
湊音は中から指を引き抜き、奏風の身体を抱えながら立ち上がった。
そのまま湯船から出ようとすると、奏風がぎゅっと腕を掴んでくる。
「……っやめる、のか? 怒った?」
まだ蕩けきった顔で濡れた瞳を不安気に揺らす奏風に、湊音は苦笑して
「やめるわけ、ないじゃん。怒ってなんかいないよ。奏風のそこ、指なんかじゃ満足しないだろ?だから」
湯船から出て、壁際のシャワーコックを捻る。
「おいで。奏風」
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