その時、見つめ合うもの

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「だが少し君は勘違いをしている。死は君の未来に待っているものではない。それは君の過去に既に存在しているのだ」 「え?」 「君は毎日どこかで死んでいるんだよ」  意外な答えだ。でもこれは私の幻の言葉であるなら、どこかでそういう言葉を知ったのであろう。  私は本棚を見た。あの本の物語に出てきたのだろうか。  死神は静かに語る。その死神が死神自身に言い聞かせているかのようにも聞こえた。 「昨日の自分とまったく同じ体調で同じような時間を過ごす事なんて誰にも出来やしないだろう? 微妙でも自分や周囲の何かが変わっているのだから。君は毎日どこかで死んで、そして毎日どこかで新しく生まれ変わっている」  そこで言葉が一度途切れたが、すぐに言葉は続いた。 「その繰り返しさ。だから辛いって気持ちなんて時間が経てば勝手に消えて行くもんさ」 「でも、でも!」  それは理屈だ、と私は思った。 「でも? 君の今の気持ちもわかるんだけどね」  死神は遮るように言った。
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