勇者を譲りました。

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 どこからどう見ても、ここはファンタジーゲームでよく見る景色。  王と謁見する場所。  そして、威厳を誇示するように座る男と、隣には美人秘書のような女性が立っている。 「で、どっちだ?」  椅子に座る男が問うと、後ろから女性の声が聞こえた。 「あっはい。えっと・・・」  振り向くと、僕と同じくらいに見える女性神官らしい人がいた。 「んだよ!なんだここは!」  隣に見知らぬ男がすべてを睨み付けるような視線で立っている。  王だと思う男が、持っていた杖を男に向ける。 「静かにしろ!今から説明してやる。」  そして、隣の秘書らしい女性がこの状況を説明してくれた。  この世界の魔王を倒す為に異世界から勇者の資質を持つ者を召喚したら、一人巻き込まれてしまった。異世界人しか飲めない薬を飲む事で勇者としての力を得るが、1個しかない。  で、資質があるのはどっちか?  ってことです。  僕たちを召喚した女性神官が、不安な表情で立っているのが気になっていた。  金髪だ。めっちゃ可愛い金髪だ。  この後、あの子、怒られるのかな・・・大丈夫かな。 「そんなの、俺に決まっているだろ。見れば判るだろ。」  長身で細身ではあるが、いかにも土建関係の現場で働いていそうなお兄さん。  対する僕は、身長165cmぐらい、無駄な脂肪は付いていないので細いが、普通の体系。  まあ僕的にも、そっちでいいと思っている。 「あっ」  僕達を召喚した女性が何かを言いかけた時、 「だろうな。隣のやつは貧弱過ぎる。そんなやつに資質が在るわけがない。」  彼女は萎縮して言葉を止めている。  王の言葉は絶対。そういうルールなんだろうと理解するには十分だった。  ってことは、もしかして勇者候補は僕の方なのか?  それは、全力で遠慮願う。僕にはちゃんと人生プランがあるのだから。  卒業したらするつもりだった小さな野望を試したいんだ。  高校卒業まで、あと5ヶ月なんです。  戻って平穏に過ごさせてください。  隣の彼はテンションが上がって意気揚々としている。  もう勇者になるつもりの彼を尊重します。  頑張って下さい。
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