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僕に見向きもしない状況だったので丁度動き易く、僕は彼女にそっと近づく。
「えっと、もしも、資質が無い人が薬を飲んだらどうなりますか?」
小声で僕は聞くと、
「異世界人なら、誰でも効果はあるのですが、資質が薄いと効果も薄くなるのです。」
僕は、最悪死ぬ可能性が無くなったので、安心する。
「じゃあ、勇者は王様が決めた彼って事で、僕を元に戻してくれますか?」
「えっと・・・あの・・・」
僕はもう一つの最悪の可能性が頭に浮かぶ。
「もしかして、戻せないのですか?」
黙って頷く、彼女。
「直ぐに戻せないとか、そういうのじゃなくて?」
もう一度、頷く彼女。
「まじかぁ・・・」
僕は自分の人生プランが崩れた事に嘆いてしまった。
「おい、そこの少年。お前は何をしている。」
王様が僕に気付く。
「勇者はそちらの方に決まったので、僕達を呼び出した彼女に、元に戻して貰おうかと、相談していたところですが・・・戻れないって今聞きました。」
「ああ、そうだな。もうお前には用が無くなったが、このまま、外に出すのは俺としても気が引ける。」
王様は少し無言になり、なにかを考えているようだった。
「そうだな。金貨200枚渡そうか。それだけあれば平民なら一生暮らせる以上の額だ。文句はないだろう。」
僕に選ぶ権利なんてなく、破格の好条件なのもだいたい理解した。
ここは機嫌を損ねないように、丁寧に感謝するところ。
僕は中世アニメでよく見る、片膝をついて頭を下げる動作をしながら、
「ありがとうございます。過大な慈悲に感謝します。」
「ああ、少し待っていろ。今、用意させる。」
隣の秘書らしい女性が部屋を出ると、間の空いた空気が漂う。
そして僕は、姿勢をどのタイミングで戻せばいいのか、悩んでいた。
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