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おろしたての真っ黒いなめらかな生地の学ランで身を固めて、内心かなり得意になっている幸太郎くんは、一年D組の生徒となりました。りっぱな学ランの着心地に加えて、1組、2組、3組だった小学校とは違い、A、B、Cとか、わがDなんて、アルファベットを使ったクラス分けも彼の気に入りました。なんだか自分はもうほとんど児童だの生徒だのといったものじゃなくて、急に半分公務員とか会社員といったものになったような気さえしたのです。いえ、ほんとに!
一人で意気揚々の幸太郎くんは、見慣れないくすんだ水色の壁や、この日のためにしっかりと拭きこまれた黒板……、おや? これはちょっと意外です。どう見ても小学校のと同じものらしい黒板の上のスピーカー……と、教室のあちらこちらへ、まるで挑むように目をやりながら、あああああ~! 早く剣道部に入部して、強い先輩たちがいる練習に加わりたいな! と思いました。
そう……そしてやがては地区大会の個人戦で優勝して……。県大会でも優勝して……。さらには日本一にまでなって……! うん、それから世界中に剣道を広めに行って……。うんうん、それから伝説の剣士コータローと呼ばれるようになって……!
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