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すぐ目の前の席に着いているなかなか背の高い男子生徒が、突然くるりとこっちを振り向いて話しかけてきました。 まったく初対面の少年でしたが、いかにも気軽に、ろくすっぽ人の顔も確かめないで、思ったことをなんでもかんでもにぎやかにしゃべります。そして自分で自分の言うことに、さも面白そうに笑い崩れます。ある意味手間がかからない子でしたが、幸太郎くんは適当に愛想よく受け答えをしてやりながら、内心ちょっと驚き呆れていました。このおしゃべりな男子は、果たしてやっぱり、担任の大林先生から注意を受けた第一号の生徒となりました。 (へええ……それにしても、こんなにゆるゆるにリラックスしてる奴もいる中学校ってところは、やっぱりほんとに広いみたいだなぁ。) 幸太郎くんは半ば感心しながら、そう思いました。 この朝初めて足を踏み入れたばかりでも、いかにも明らかなこととして、この中学校というところは単に敷地の大きさだけに限らない、広さというものを持っています。それからたぶん、深さというべき何かも。何しろ1組、2組じゃなくてD組ですし。     
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