1人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日の朝
先生が教壇に立ち、連絡事項を話している。
純也は前の席を見た。席には誰も座っていない。
「知っているやつもいると思うが、草壁が親の仕事の都合で海外へ転校した」
「えー、急すぎない?」
「急な話でもあったが、本人からの要望で黙っていたんだ。ごめんな」
クラスで騒然としたが、次の瞬間には違う話題に変わっていた。純也は衝撃的すぎて何も考えられなかった。
「お別れしたかったね」
あとで香奈に聞いたら、知っていたが口留めされていたらしい。スマホに連絡しても既読にすらならない。
ふと昨日雪が寝ていた場所を見て、目を見開いた。
自分の机の角に小さく何かが書かれていた。
そこには「私は出会ったときから中村純也が好きでした」と書かれた文字。
純也は、その文字のところを強く消しゴムで何回もこすった。文字が消えても何回も何回もこすった。純也は苦しい表情を浮かべ、机の文字を強くこすって消した。
一目惚れを笑っていたくせに自分だってそうじゃないか。
香奈はユキの気持ちを知らなかったのだろう。
なんで、何も言わず行ってしまったんだろう。なんで、
俺におまえの告白を受けとめさせてくれなかったんだよ。
純也は自分の心の中で消化することできない気持ちを抱え、ユキの残したシャーペンを握りしめた。
最初のコメントを投稿しよう!