海と彼と私

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========== 3か月前。 新体操の大会の打ち上げで、私達のチームは先生と小料理屋さんに行った。 先生が、ここの料理はすごく美味しいし、大皿料理をたくさん頼んであるからどんどん食べろって。 その時はみんな、なんで小料理屋~? なんて笑ったんだけど、本当に美味しかったからいっぱい食べたんだよね。 大人数だったから、2階のお座敷席でたくさんのテーブルを使わせてもらった。 ふと、お座敷の窓際に座っている男の子が目に入る。 彼はテーブルに片肘をついて、窓の外を眺めてた。 私も自分が座っている場所から外を覗いたけど、そこには特に何もなくて。 でも、彼は何かを見てた。 綺麗な横顔。 切れ長の目に、たまに揺れ動く長いまつ毛。 暗い湖の底を思わせる、青にも見えるような黒髪。 頬を支える、大きな手。 私は彼の視線の先に、なぜか静かな海があるような気がした。 まっすぐ続く海の地平線を見てるような、そんな印象。 そして、その黒髪の彼を。 なんて儚げで、守ってあげたくなるような人なんだ、と意味もなく思った。 触れれば、壊れてしまうんじゃないかと…。 ――その時、ふいに部員に話しかけられ我に返った。 「なあにぃ~しゅう、ああいう男子が好みなの? さっきからジッと見て」 横に座っていたチームメイトに小突かれ、茶化される。 「ちょっ!? ち、ちがうよ!」 「まったく、しゅうは告られても断ってばっかりなのに。ああいうのが好きなんだ~」 「何言ってんのよぉ! 違うってば!」 「へぇ~、あの男子? ここの店の子なのかな? なんかミステリアスで私も結構好きかも」 「私も意外とタイプだわ~。声かけてみる?」 「やめなってー」 「ふーん、私はなんか不愛想な感じで苦手~……」 「あっ! 立ち上がったよ」 私達の会話が聞こえたのだろうか。 黒髪の彼はスッと立ち上がり、従業員専用のドアの向こうに行ってしまった。 「あーあ、行っちゃった。バイトくんかな?」 「まぁまぁ、もういいじゃん」 私は苦笑いでみんなを落ち着かせ、また料理に箸をつけた。
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