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そして、再会の日は案外早くやってきた。
次の日同じ場所で、彼はまた勉強していたのだ。
胸がドキンと跳ね上がる。
こ、これは話しかけるべきなのか。
でも、急に話しかけたら変に思われるかな。
彼は私に気づく様子はなく、熱心に勉強をしているみたいだ。
目を伏せ、ノートにペンを走らせている姿。
やっぱり、綺麗。
絵になるな……。
ジュースを買いに来たのも忘れて、彼に見入ってしまった。
すると――彼は私に気づいたのか、こちらに視線を向けた。
私の心臓が、再びドキンと跳ね上がる。
離れたところからジッと見てるなんて、私、変質者だ!
「こ、こんにちは」
しまった。声が裏返った。
そんな私に、彼は無言のまま、顎を突き出すような感じで小さく頭を下げた。
私は車いすを進め、彼に近づく。
「あの……昨日は、100円拾ってくれてありがとうございました」
「あ、はい…」
抑揚のない、ちょっと低めの声で、小さくつぶやく彼。
また無表情で小さく頭を下げると、勉強を再開してしまった。
もう話しかけるな、ってことなのかな。
全然こっちを見ない。
仕方ないから、自動販売機でオレンジジュースを買った。
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