海と彼と私

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ジュースを取る時チラッと彼を見ても、やっぱりノートから目を離さない。 諦めて病室に戻ろうとしたけれど。 心がモヤモヤする。 「~~~~~~っっ!!」 私は車輪を回す手を止め、彼を振り返った。 「あのっ…!!」 彼は顔を上げて、驚いたように私を見た。 自分でも不思議。でも、どうしても声をかけたくなった。 「えっと…私、文永しゅうです! あなたは?」 心臓の音がうるさくて、声が大きくなってしまった。恥ずかしい。 「……柚木咲夜(ゆずきさくや)」 ボソッと自分の名前をつぶやく彼。 「ゆ、柚木くん! また! 話しかけてもいいですかっ!?」 自分の顔が、どんどん熱くなっていくのがわかる。 何言ってだろ、と思いつつ自分が止められなかった。 答えを待つ1秒が、やけに長い。 彼は私を見ながら、でも無表情で小さく頷いた。 よかった。 私は少し微笑むと、ぺこりと頭を下げて車いすを動かした。 ヤバい。 ニヤニヤがおさまらない。 他の患者さんや看護師さんにニヤけ顔を見られないよう、平静を装い病室へ戻った。 だけど、まだ心臓がドキドキしてる。 でも違う、そうじゃない。 私は“友達”を作りたかっただけだから!! 心の中で強く言い聞かせ、1人でコクンと頷いた。
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