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「しゅうが言ってた通り、綺麗な男の子だねぇ」
「う、うん。でも、話しかけたりしてないでしょうね?」
私は帆奈と由香里をジロリと睨んだ。
「……あ~…ちょっとだけ話したかな~」
私と目を合わせず、口をとがらせて言う帆奈。
「マジで!?」
私は思わず大声を出した。
「て、言ってもさ、トイレどこですか? って聞いてみただけだよ」
「そしたらなんてっ?」
「普通に立ち上がって、丁寧に教えてくれたけど、愛想がないって言うか~、とっつきにくいって言うか。ありがとうってお礼言っても、あ、はい……って無表情。ね? 由香里」
「うん、仲よくなるの大変そ~」
「あ~、まぁ……それは認めるわ」
私は2人の行動に驚いたけど、ひとまず変なことはしてないみたいでホッとした。
「でも、恋に疎いしゅうが好きになった男子だもん。何かいいところがあったんでしょ?」
「いや、恋じゃないし」
「しゅう、自分で分かってないの? 恋する乙女の顔してるよ?」
帆奈に言われ、私は慌てて自分の頬を両手で押さえた。
それを見てか、帆奈と由香里はニッと笑う。
「まぁ、近づけるのは入院中だけだろうし、今のうちに連絡先でもゲットできるように頑張りなよ」
由香里が帆奈の話に相槌を打つ。
「じゃ、また来るから。由香里、そろそろ行こっか」
「そだね! しゅう、また来るね~」
「うん、わかった。下まで送る」
「いいからいいから。しゅうは脚ケガしてるんだから、ここでいいよ。じゃあね」
手を振りながら病室を出て行った2人。
私も笑顔で手を振って、ドアが閉まったのを見てからゆっくり手を下ろした。
急におとずれる静寂。
しんとした中で再びベッドに寝転ぶと、別れ際に言われた言葉を思い出す。
“――まぁ、近づけるのは入院中だけだろうし、今のうちに連絡先でもゲットできるように頑張りなよ”
そうだよね、柚木くんと話せるのは、きっと入院中だけ。
そりゃ、いい友達になれたら嬉しいと思ってるけど……。
この時の私は、そんな風に考えていた。
だけど。
私が思っている以上に、彼が私の人生に大きく関わるなんて。
この時はまだ、知らなかった。
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