目覚めと絶望とコーラ

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車に吹っ飛ばされた時。 空を舞いながら、 「あ、死んだな」 と思った。 だけど、生きてた。 私は、文永(ふみなが)しゅう。17歳、女子。県立 愛南(あいなん)高等学校の3年生。 1週間前、交通事故にあった。 あんまり記憶がないのだけれど、買い物へ行こうと自転車に乗っていた時。 こっちへ車が突っ込んできた。 私は自転車もろとも吹っ飛んだ。 そして一昨日、目が覚めたばかり。 その時は交通事故にあったとか、1週間経ってるとか、よくわからなかった。 そんなことより、とにかく体が動かないことにびっくりして。 まるで、自分の体じゃないみたいだ。 管みたいなのもいっぱいつながってるし。 「ここはどこ? 病院なの? なんで?」 って感じ。 状況をきちんと理解して事故のことを思い出したのも、少し時間が経ってからだった。 昨日ICUから個室に移動して、今日になってやっと体が少し動くようになった。 とは言え、点滴をつけているからあんまり自由はないし、体もまだまだ痛い。 体が痛むのは、ずっと眠っていたせいもあるらしい。 擦り傷や打ち身などの傷以外、上半身で大きな傷はないって聞いた。 けれど、右脚に巻かれた包帯が気になる。足の先まで、ぐるぐる。 あちこち痛いけど、それでかえって「生きてるんだな」って実感する。 今では誰かが廊下を歩く音や、窓から入る風まで新鮮に感じる。 「文永さーん、文永しゅうちゃん、検温の時間だから、体温計はさんでね」 看護師さんが、朝の検温にやってきた。 私は笑顔で体温計を受け取る。
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