目覚めと絶望とコーラ

2/7
前へ
/464ページ
次へ
車に吹っ飛ばされた時。 空を舞いながら、 「あ、死んだな」 と思った。 だけど、生きてた。 私は、文永(ふみなが)しゅう。17歳、女子。県立 愛南(あいなん)高等学校の3年生。 1週間前、交通事故にあった。 あんまり記憶がないのだけれど、買い物へ行こうと自転車に乗っていた時。 こっちへ車が突っ込んできた。 私は自転車もろとも吹っ飛んだ。 そして一昨日、目が覚めたばかり。 その時は交通事故にあったとか、1週間経ってるとか、よくわからなかった。 そんなことより、とにかく体が動かないことにびっくりして。 まるで、自分の体じゃないみたいだ。 管みたいなのもいっぱいつながってるし。 「ここはどこ? 病院なの? なんで?」 って感じ。 状況をきちんと理解して事故のことを思い出したのも、少し時間が経ってからだった。 昨日ICUから個室に移動して、今日になってやっと体が少し動くようになった。 とは言え、点滴をつけているからあんまり自由はないし、体もまだまだ痛い。 体が痛むのは、ずっと眠っていたせいもあるらしい。 擦り傷や打ち身などの傷以外、上半身で大きな傷はないって聞いた。 けれど、右脚に巻かれた包帯が気になる。足の先まで、ぐるぐる。 あちこち痛いけど、それでかえって「生きてるんだな」って実感する。 今では誰かが廊下を歩く音や、窓から入る風まで新鮮に感じる。 「文永さーん、文永しゅうちゃん、検温の時間だから、体温計はさんでね」 看護師さんが、朝の検温にやってきた。 私は笑顔で体温計を受け取る。
/464ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加