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「Well, Shu? Your doctor said you should undergo rehabilitation to walk early. (えーっとね、しゅう? 主治医が早く歩けるようにリハビリを勧めていたわ)」
「お母さん、英語で話さなくてもリハビリぐらいするよ? なんなの?」
一瞬の沈黙。
そのあと、お母さんは思い出したようにポンと手を叩き、笑顔になった。
「それより見て~。入院中ヒマでしょう? お母さん、いいもの持って来たの! ジャーン!」
お母さんが紙袋から出したのは、スケッチブック、鉛筆、色鉛筆などの文房具だった。
「しゅうは新体操も好きだけど、絵を描くのも好きでしょ? ヒマだったら絵を描いたらどう?」
「………うん」
なんか、ごまかされたような気がする。
お母さんからスケッチブックとペンを受け取り、テーブルに置いた。
「お茶飲む?」
「うん」
自分の右脚をそっと触ってみる。
やっぱり、不安しかない。
「………脚、動くかな。前みたいに……」
私のつぶやきに対し、お母さんは何も言わずにお茶をいれていた。
それが不安で、もう一度言う。
「脚…」
「動くようにリハビリするの」
私が言い切る前に、お母さんは背を向けたまま強く言った。
振り向いた時のお母さんは、いつもの笑顔を浮かべていた。
「あー、そうそう! クラスメイトの帆奈ちゃんと由香里ちゃんが近々お見舞いに来るって」
「帆奈と由香里が?」
「そうよ。二人ともしゅうが目を覚ましたこと、すごく喜んでたよ」
「そっか、帆奈と由香里にチャットしとく。あ、そういや、もうすぐ主治医来るって。今日の検査結果の説明と、具合を見に」
そう話したところで、主治医が病室に入ってきた。
「こんにちは、文永さん、体調はどうかな?」
「ああ、はい。色々痛いです」
「そうだろうね。あちこち打ってるし、切ったり擦りむいたり。でも、今日の検査では頭の中は問題なかったよ。見た目の傷は、時間が経てば綺麗に治るだろうから心配しないで」
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