目覚めと絶望とコーラ

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その中には、入り口まで見送っている入院患者もいるようで。 あそこにいる男の子も、そうなのだろう。 私とそんなに年が変わらなそうな2人組。 少し明るい茶髪の男子が、入院患者と思われる黒髪の男子の背中をバシンと叩く。 そして、片手をスッと上げて去っていった。 黒髪男子は背中へ手を伸ばし、さすりながら院内に入っていく。 私がいずれあんな風に歩けても、大好きな新体操はもう、できない。 そう思うと、今度は涙の代わりにため息が出た。 明日が来ても、きっと楽しくない。 ========== 次の日。 看護師さんが私を車いすに乗せ、外に連れていってくれた。 今の私には、愛想笑いすることさえ辛い。 「疲れた」ということを理由に、病室に帰してもらった。 看護師さんが、私の気分転換のために連れ出してくれたことはわかってる。 でも、私はまだそんな気持ちになれない。 なんとなく。 ペンを手に取り、お母さんが持ってきてくれたスケッチブックに、窓から見える海の景色を描き始めた。 けれど、途中で手が止まる。 グルグルグシャグシャ殴り描きして、スケッチブックを閉じた。 「……コーラ」 こんな時、大人だったらお酒でも飲むんだろうか。 だけど私は今、炭酸ジュースが飲みたい。 そう思いながら車いすに乗り、廊下に出た。 腕は痛いけど、打撲しただけだ。進める。 “カフェスペース” 看護師さんが作ったのであろう、可愛い文字で書かれた貼り紙を見つけた。 ここは、面会に来た人や患者が自由に使っていいスペース。 自動販売機と貸し出し用の雑誌や絵本が置いてあり、長テーブルが3つ繋げられた物が中央に2列。 壁際には、ふんわりした1人掛け用のソファーが3つ。 カフェスペースには、雑誌を読んだりお菓子を食べたりしている人がいた。 私は自動販売機の前まで行き、ポケットから小銭を取り出す。 お金を入れようと手を伸ばした。 けれど、手を滑らせて100円玉を落としてしまった。 転がっていく100円玉。 ツイてない…。 拾おうと、車いすを進めた時だった。
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