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「ダメ元でやってみるか」
岡喜助は人生初詣をしてみることにした。賽銭を入れる人の列に並んだ。やり方をジッと見る。参拝の仕方すらわからなかった。ただ、人によって微妙に違う。まあ、だいたいでいいだろう。要は気持ちが大事であろう。列も短くなり、もうすぐで岡喜助の番だ。と、そこで重大なことに気が付いた。お金が全く無いのだ。財布ごと家に置いてきてしまった。参拝する気など全くなかったかはだ。ポケットというポケットに手を入れてお金を探してみる。しかし、お金は一銭も見つからず紙切れしか出てこない。この紙切れを入れようかどうか迷うが、念のためやめておく。
「そんな都合よく出てこないか」と諦めかけた時だ。ガサッと上着の内ポケットに何かがある音がした。僅かな希望を抱きポケットから出してみる。
「なんでこんなものがここに?まあ、似てると言えば似てるけど」
そんなことをしている間に岡喜助の参拝の出番がやってきた。
「まあ、これを入れてみるか。シャレの通じる神様かもしれんしな」そう思い、ポケットから出てきたおかきの小袋を賽銭箱に入れた。ただ、入れようと投げたが、おかきの小袋は大きくて、賽銭箱には入らなかったので、賽銭箱に乗っている、という表現が正しかった。
「おかねじゃなくておかきを入れてどうする」自分でそんなことを考えながら、ポケットの中の宝クジという紙切れを握りしめる。買っておいたのをすっかり忘れていた。
「もう結果は出ている頃だし、念のため確認してみるか。これで何億も当たったら部屋におかきの絵でも飾らんとダメだな」と訳のわからんことを一人で考え、妙な高揚感と期待感を覚えながら、いつもより少し足早に家路につくのであった。
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