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 時間はあっという間に過ぎて、夕暮れ時。  日が暮れるのがどんどんと遅くなり、今はまだ真昼のように明るい。その時、まりあは構内を出て帰宅途中だった。  自転車に乗れば、景色が流れるように移り変わっていく。それがなにより面白く、風が髪をなぶっていくのが涼しくて気持ちいい。いつもと変わらぬ通学路を、少しだけ速度を落としてペダルを漕いでいた、その時のことである。  目の前をふうわり、と一匹の黒い蝶が横切った。咄嗟にブレーキをかけて自転車を止める。すぐ側で飛んでいる蝶の羽ばたきは妙にゆっくりで、そこだけ映像のスロー再生をしているかのようだ。夕日がジリジリと肌を焼き、自転車を降りてしまえば風も吹いてない。  カラスアゲハは大きな羽をゆっくりとはばたかせ、中空にぼんやりと浮かんでいた。風もないのに、その動きは気流に乗って流れているかのように見える。 「待て……!」  不意に、時が止まったような空間を震わせる高い声が耳に届いた。続いてまりあの鼻先で、何かが振り下ろされる。 「や、なに?」  カラスアゲハに見とれていたから、咄嗟になにが起こったのか把握できない。ただ驚いてパチパチと瞬いていると、下から声を掛けられた。     
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