こっくりさんの代償

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こっくりさんの代償

話は一週間ほど前に遡る。  そう、その日は階段教室で授業を受けていた。午後三時を回った授業は特に日差しがきつく、ホワイトボードが照り返しで光ってしまうと、全くと言っていいほど字が追えない。ノートを書き写すのは早々に諦めて、教授の話だけに集中する時間が続いた。  やがて授業の終わりを知らせるチャイムが構内に鳴り響くと、そこかしこから華やいだざわめきが上がる。それはまるで寄せては返す、陽にきらめくさざ波のようだ。授業中とはまるで態度の違う学生たちに苦笑いしながら教室を後にする老教授を見送ると、秋山まりあはホワイトボードに残された文字を熱心に書き写し始めた。  まりあが通うこの女子短大は、女子大も併設している。同じ敷地の中にあるから学生も多くて賑やかだ。授業を受けていた階段教室は女子大の授業でよく使われる場所だが、今日のように共通の学科の授業がある場合は、まりあたち短大生もこの教室を訪れるのだ。勝手の違う大きな部屋は、エアコンでよく管理されているのかとても涼しい。     
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