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村には返せないと思う。しかしここに留めても少年が退屈しないだろうかということが気になった。私はすることがなければ日がな一日寝ていることが多い。私は何も食べる必要はないが少年には食べ物も用意しなければならないだろう。
面倒だ、ああ面倒だ。
「嫁と言ったが、何をすればいいのかわかっているか?」
「……水神さまのよいようにと……」
何も教わっていないようだ。私はもう何もかもが面倒くさくなって布団を出した。少年がそれを見てびくりと震える。
「腹はすいているか?」
「……いえ……あ、でも飲み物はほしいです……」
びくびくしながらも自分の要求を伝える姿には好感が持てた。水の入った湯のみを出せば少年は目を丸くして「ありがとうございます」と言って受け取った。
お礼が言えるのもいい。私はうんうん、と頷いた。
決めた。
こくこくと素直に水を飲む少年を眺めながら、私は身体を人間の女性に変えた。
「嫁にはできぬが、夫にはなりたくないか?」
「……え?」
驚きで手から湯のみが落ちたのを掴む。
「お夕(ゆう)、いや夕(せき)。私の夫となれ」
「……え……は、はい……」
湯のみを消し、少年を抱きこむと、彼の頬は赤くなった。どうも胸が当たったらしい。
「あ、でも……僕抱き方とか、その知らなくて……」
「よい。全て私に任せよ」
神と交われば神にはならないが同じ時を過ごすことになる。故に気軽に人と交わらぬよう聞いてはいるがどうでもよかった。
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