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「はあ、よく降るなあ・・・」
「朝からずっと降ってるね。」
停めたワゴン車から、男性二人と女性二人が降りてきた。彼らは車に積んだ、ギタアやドラムなどの楽器や、アンプリファイアアなどの機材を降ろして、帰宅先の一軒家へと運んだ。これらの荷物は防水対策のシイトで包まれているが、急いで家の中へと運んでいった。荷物を運び終わると、四人も家の中へ入った。そうして玄関のそばにある、LDKの部屋に四人とも入って、ひとつの空間の中で各々の行動をした。
この四人は最近人気になってきたバンド、「キウイのちメガネ」のメンバアである。彼らはいわゆる、シンガアソングライタアであり、その著作曲の作風や演奏の表現力が、若者を中心に絶大な支持を受けて、昨今では知らない人の方が少数派の、人気バンドとなった。メンバアは男性二人と女性二人で構成されている。
リビングのソファにぐったりと座りこんだものの、徐に自分のギタアを取り出して、そのメンテナンスを始めた茶髪の癖っ毛の男性が、唯瀬慧介という、「キウメガ」(バンド名「キウイのちメガネ」の略称)の中心人物だ。メンバアを集めてこのバンドを結成した。ただ彼はリイダアではない。逐一細かい指示を出したり仕切ったりすることを好まないからだ。無邪気だが短気で怒りっぽい、良い意味でも悪い意味でも子どものような人だ。
キッチンに立ってメンバアの晩御飯の支度をしている茶髪のふんわりしたボブヘアの女性が 、紬崎彩枝という、鍵盤弾きで、手風琴も演奏できる女性だ。「キウメガ」のライブの演出も担当する。天使のような優しさと、あどけない微笑みを持っている。意外にも文学が好きで、それを通じて慧介と親しくなった、同じ中学の同級生だ。
リビングの机の上に広げた楽譜と向かい合い、曲を書いている黒髪の丸眼鏡の男性が澪島悠一という、ベエス担当の男性だ。知識が豊富でメンバアの中で一番音楽に詳しい、「キウメガ」のリイダアだ。作曲、編曲も得意だが、家事全般も得意とする。クウルな男性だ。慧介とは同じ大学の同級生だ。彼は一年浪人しているので慧介より歳はひとつ上である。大学の軽音楽部で知り合った二人は意気投合して、現在に至る。
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