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「メランコリイって、果物の飲み物っぽいよね。」
「私は葡萄ジュウスや葡萄酒っぽいと思うんだ。」
雪愛の言葉を聞いて、彩枝がそう言う。
「葡萄っていうところが興味深いね。」
悠一が彩枝に言う。
「葡萄ジュウスや葡萄酒ね・・・。」
慧介が相変わらず怪訝そうに言う。悠一が何気無く慧介のノオトをふと見ると、“メランコリイの葡萄酒”と書いてある。それを見て、
「なんだ。君も気に入ってるんじゃないか。」
と、悠一は慧介に言う。
「い、いや、これは、僕たちが歌う詩としてだね・・・。」
慧介は少し慌てて、そして少し気まずそうに言う。
「へぇー、そうなんだ。」
「やっぱり慧介もそう思うんだね。」
雪愛と彩枝が続けざまに言う。慧介はばつが悪そうにノオトとにらめっこをしていた。
あれこれとやりとりをしているうちに、彩枝がメンバアの晩御飯を作り終えた。ダイニングのテエブルに、おいしそうなハンバアグが四人分並べられた。おしゃれにカットされた茹で卵入りのサラダの大皿が真ん中に置かれ、各個人の席に取り皿とコオンスウプ、白ご飯もある。四人のメンバアはひとつのテエブルのもとに集まり、ささやかに食事を始めた。
おいしいハンバアグを楽しんでいる最中にも、夜の空に雨は降り続けた。ダイニングの部屋からも、四人に雨の降る音が聴こえてくる。
「雨、まだ降ってるね。」
「この分じゃあ、明日も雨だな。」
彩枝が言うと、悠一が続けて言う。
「せっかく明日、休日なのにね。」
雪愛が言う。
「次の休日に、自転車でぶらっと出掛けようと思ったのになあ・・・。」
慧介は相変わらず怪訝そうに言う。
「でも、雨の日は雨の日で楽しみ方があると思うけどね。」
「雨の日の楽しみ方ね・・・。」
彩枝の言葉に慧介はそう言うと、コオンスウプをすすり始めた。
「私は雨の日は、まあベエスのメンテナンスをして、作曲や編曲をしているだけで、満足のいく一日が過ごせるなあ。」
悠一はそう言う。
「音楽のことに集中するのもいいけど、」
「その日ならではの、楽しい過ごし方がいいよ。」
雪愛と彩枝がそう言うと、
「そ、そうかい・・・?」
宥められたように悠一はそう言った。
四人は楽しい食事の時間を終えると、みんなで手伝って食器を洗って片付けて、それから暫くリビングで寛いでから、その後は各々のタイミングで就寝の支度をした。
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