凡ては彼女の為に

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夜道にからんころんと下駄が鳴り響く。月明かりが夜道を照らしていて。今、私が背負っている娘を縛る男はもう居ないのです。死んでしまった。頸に二つの真っ黒い指の跡を遺し、顔を茄子の様にして。そんな事は今はどうでもいい。輝かしい私の今後の事を考えた方がよっぽど有意義である。 まず、私は一流の企業に就職して此の娘と結婚し、幸せな家庭を築くのだ。子供は三人が丁度良い。女児が二人に男児は一人。屋敷は大きくなくていい。女中を多く雇うことになってしまうから。そうだ。その調子だ。 「嗚呼。今夜は月が綺麗ですよ。そう思いませんか。」背負って居る彼女に話しかけるも応答はあ無い。疲れてしまったのか、ぐっすりと眠っている。 からんころん。からんころん。 「月が綺麗ですね。」
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