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「あ……」
「やっぱり……私ね、少し前から気がついてたの」
「………(さすが直感人!とは言えない)」
「でも修は、就職して1年も経たないよ。親が許してくれるかなぁ」
え・・・・親?杏子の気持ちは大丈夫なの?それとも一先ず僕でもいいかなって感じ?色んな気持ちが交差している僕をよそ目に杏子は、親が許してくれるかばかり考えているみたいだった。杏子は1人っ子で父親が同じく建築家だった。確かにハードルは高い。
「じゃあさ、ひとまず内緒にしといてくれる?」
「内緒?」
「そしたら、お母さんだけ言うわね。お父さんは絶対に無理。修がもし家に挨拶に来てくれたとしたら、きっと生きて帰って来れないと思うわ」
「まじ?」
「ま・じ」
杏子は僕を見てクスクス笑った。
「そのかわり条件ね」
「条件?」
「紅葉の綺麗に見える場所にお引越ししてくれる?」
「紅葉?」
「それが、一緒に暮らす条件」
杏子は嬉しそうに僕を見た。
「この街は確かに便利だし美味しいものや楽しいことが沢山あって退屈しないわ」
「……」
「でもね、街がグレーなの。街の紅葉までグレーに吸い込まれてる」
「……」
「もっと色のある場所で修と暮らしたい」
「……」
「むふふ」
突然杏子が笑った。
「今、ちょっぴりいいかもって思ったでしょ」
杏子はそう言うと、又笑った。
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