1章 マライカ ③ 美しき日本

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 入籍してこの町に来たのが4年前だった。それまではお互いの生活を考えて、会社近くのマンションで別々に暮らしていた。ていうか、互いにまだ遠慮して一緒に暮らすことを言い出せないでいたのだ。ただ僕は、夏が過ぎた頃から、徐々に、杏子と一緒に暮らしたいと思い始めていた。  あの頃、土曜の昼下がりは杏子とのデートがお決まりだった。金曜日の徹夜仕事が終わり家で少しだけ仮眠をとり、それから杏子のマンションまで迎えに行った。  待つのはいつも僕だった。部屋まで行く日もあったが、 「お天気がいい日は日光浴してね」  そんな杏子の言葉に誘われて待ち時間は、彼女のマンション付近を散歩することが多かった。 せわしく過ぎる毎日がふと途切れるこの時間はいつもより街が綺麗に見えてようやく深呼吸ができた。  赤く染まった落ち葉、グレーチングに落ちる陽射し。その柔らかな照り返しが、僕に季節の移り変わりを教えてくれた。
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